石見神楽面(長浜面)の技法と由来

 島根県西部の石見地方では神楽が盛んで、特に明治に入り神職舞が民間の舞手(現在のかたち)に移ると共に、石見各地に神楽の団体が次々と結成されてきました。
現在石見地方から広島県にかけては、同じ形態を持つ神楽団が優に400に及び、これらの団体の多くが使用する石見神楽面(技法分類=長浜面・市木面)は、強靭な楮(コウゾ)で作られた和紙の面です。
日本の各地で神楽は舞い踊られますが、これほど多くの神楽団体が一同に、和紙の面を使うのは、大変めずらしく全国類を見ません。
その技法は、先ず粘土で面の原型を彫塑し、乾燥後、柿渋入りの糊で和紙を幾重にも貼り合わせ、原型の粘土を一つ一つ壊して作ります。この漆工芸の中の「脱活乾漆」の技法を応用した和紙の面は、長浜人形に携わる人形師によって手掛けられ、勇壮でテンポの速い石見神楽には、軽くて丈夫な和紙の面が最適であると、古くより浜田の地で制作されてきました。
近年、神楽舞だけでなく新築祝・記念品、海外(アメリカ・韓国・中国・ブータン・インドネシアなど)、秋篠宮家、ブータン国王などに献上品としてもおさめられています。
石見神楽面の製造工程
①面の原型作り

面の原型作り

上質の土で面を彫塑する。
②自然乾燥

自然乾燥

③面張り

面張り

柿渋入リの糊で石州和紙を幾重にも貼り合わせる。
④原型はずし

原型はずし

粘土の原型を木槌で壊す。
⑤柿渋ぬり

柿渋ぬり

面裏を整え柿渋を充分に塗り重ねる。
⑥穴あけ

穴あけ

面の目、鼻、毛穴等を火箸で開ける。
⑦胡粉(ごふん)かけ

胡粉(ごふん)かけ

胡粉塗り→磨きを繰り返し面の肌を作る。
⑧絵付

絵付

面に彩色をほどこす。
⑨毛植え

毛植え

人毛、馬毛、ヤク毛等を使用。
⑩完成

完成

神楽用・装飾用として需要。